2024/10/17
「奥歯に入れているブリッジがグラグラ揺れているのが気になる」とご相談いただきました。
拝見したところ、右下奥歯の3本のうち真ん中の歯が欠損していたため、両隣の歯を土台として人工歯を橋渡しする被せ物「ブリッジ」が装着されていました。しかし、土台になっている2本の歯は細菌感染により歯ぐきが炎症を起こす「歯周病」でした。
残念ながら、症状が進行して奥歯周囲の骨量が少なくなり、歯ぐきがやせたことが原因でブリッジがグラグラとしています。
また、左上奥歯には金属の被せ物「メタルクラウン」が装着されていましたが、土台の歯が折れてしまう「歯根破折」が見られ、歯を温存することが難しい状態でした。歯根破折は、過去に神経の治療「根管治療」を行っていたり、治療後に歯の厚みが不足していたりなどの理由から、歯の強度が低下することで生じます。
さらに、左上奥歯の手前側の歯には銀の詰め物「インレー」が、左下奥歯にはメタルクラウンが装着されていましたが、いずれも歯にぴったり合っておらず、歯との隙間から虫歯が進行していました。
レントゲンで確認したところ、左下奥には横向きに埋まっている親知らずも認められます。
今回、患者様は揺れているブリッジの部位だけでなくお口全体の治療を希望されたため、噛み合わせの改善を目指すために以下の手順で治療を行うことを提案し、了承いただきました。
①右下のブリッジを切断して取り外し、揺れていた土台の歯(第2大臼歯)、歯根破折していた左上の奥歯(左上第2大臼歯)を抜く。
②抜歯によって欠損状態になる右下奥歯には、顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に被せ物をする「インプラント治療」を行う。
③抜歯によって欠損状態になる左上奥歯には、左下奥に埋まっている親知らず(第3大臼歯)を抜いて移植する。
④不具合があるインレーやクラウンに対しては、歯科用顕微鏡「マイクロスコープ」を用いて歯の神経を取り除き、根管を清潔な状態にする自費診療の「精密根管治療」を行う。
また最終的な被せ物は、患者様と相談のうえ自然な白さが特徴の「セラミック」を使用することに決定しました。
揺れていた右下奥歯は、抜いたあとに2本のインプラントを埋入し、インプラントと骨がしっかり結合したことを確認したあと、インプラントの頭部分を歯ぐきの上に出し、形を整えてから最終的な被せ物を装着します。
また、ブリッジ手前の土台になっていた歯も、単独でセラミックを被せる治療を行いました。
歯根破折していた左上奥歯を抜いたあとは、まず移植に使用する左下の親知らずの神経を取り除き、神経が入っていた管をきれいにする処置を行いました。移植する歯に神経が残っていると、移植後に歯がうまく定着しないおそれがあるためです。
加えて、親知らずを少し引っ張り出す処置を行い、抜きやすくしてから抜歯を行いました。
次に、歯が定着するために必要な歯の根を覆っている薄い膜「歯根膜」を傷つけないよう注意しながら、親知らずを左上奥の欠損部分へ移植し、糸とワイヤーでしっかりと固定します。その後、歯と骨が定着したことが確認できてから、被せ物を装着しました。
不具合があるインレーやクラウンに対する精密根管治療では、マイクロスコープを用いて肉眼では見ることが難しい部位を確認しながら、感染した組織や神経を丁寧に取り除きました。
精密根管治療は、一般的な保険適用の根管治療と比べて治療回数が少なく、歯根の病気が発生するリスクを減らせるメリットがあります。
歯の内部をしっかり清掃できたことを確認してから歯の形を整え、それぞれの歯に合った被せ物や詰め物を作製して装着し、治療を終了しました。
約2,500,000円
(精密根管治療・移植・インプラント・セラミック・歯を引っ張り出す矯正処置込み)
術後も良好で、定期検診で予防にも意欲的になっていただきました。
・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・メンテナンスを怠ったり、喫煙したりすると、お口の中に大きな悪影響を及ぼし、インプラント周囲炎などにかかる可能性があります
・治療後に正しい歯磨きやメンテナンスを怠ると、虫歯が再発する場合があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
2024/10/17
「他院でセラミック治療を行ったが、腫れて痛みが出た。マイクロスコープでしっかりと治療したい」と、セカンドオピニオンで来院いただきました。
拝見したところ、左下の奥歯は「根尖性(こんせんせい)歯周炎」を起こしており、腫れや痛みが見られました。
根尖性歯周炎とは、神経が死んでしまった歯や神経を取って治療した歯の内部に細菌が侵入し、歯根の先端が炎症を起こす病気です。
CTを撮影して詳しく検査をした結果、根の周囲には感染による膿の袋が認められ、歯を支える骨も大きく溶けています。このまま放置すると、炎症がさらに広がって歯を失うリスクも高まるため、早急な治療が必要だと診断しました。
患者様の希望に沿い、歯科用顕微鏡「マイクロスコープ」を使用して根の内部の細菌を除去する「精密根管治療」を行うこと、最終的な被せ物には虫歯の再発リスクが低く耐久性もある「EMAX」で作製することを提案し、同意いただきました。
マイクロスコープは、肉眼では見えにくい小さな患部を拡大して確認できるため、根の内部にある感染源を正確に取り除くことが可能です。これにより、将来的に歯を失ったり感染が再発したりするリスクの低減が期待できます。
治療の開始前には、唾液や雑菌が根の中に入らないように治療部位をゴムのシートで保護する「ラバーダム防湿」を施したのち、マイクロスコープで観察しながら感染組織を丁寧に除去して薬を詰めました。
5ヶ月間の経過観察を行ったあと、再度CTを撮影して根の状態を確認したところ、歯を支える骨が再生していることが確認できました。
その後は最終的な被せ物を作製するために、歯を補強する土台を構築して型取りを行い、完成したEMAXを装着して治療を終了しています。
現在は、経過を観察しながら定期的なメンテナンスを続けています。
約230,000円
【内訳】
精密根管治療、土台、EMAXの被せ物
術後も再発なく定期検診に通われています。
・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・硬い素材の場合、他の天然歯を傷つけることがあります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
・一部の治療を除き、自費診療(保険適用外治療)です
2024/10/17
「噛むと歯が痛む。保険適用の根管治療を行ったが、改善しないので検査をしてほしい」とご相談いただきました。
左上奥歯の噛み合わせを拝見したところ、奥から2本分の歯がうまく噛み合わずに下の歯に強く当たっていたため、噛むと痛む「咬合(こうごう)痛」が生じています。
また、レントゲン撮影で詳しく調べた結果、左上奥から2番目の歯は、神経が通っている根の内部に細菌感染が疑われる状態でした。
このまま放置すると、噛むことが困難になるだけでなく、歯が折れたり欠けたりするリスクや、細菌感染が広がって歯茎が腫れるおそれがあります。
以上のことから、まずは根の内部を清掃して薬を詰める「根管治療」をやり直したあと、周囲の歯と調和の取れた噛み合わせを実現するために、被せ物による修復が必要だと診断しました。
根の内部を清掃する方法として、歯科用顕微鏡「マイクロスコープ」を用いた自費診療の「精密根管治療」を提案しました。
精密根管治療は、肉眼では見えにくい部位も正確に確認しながら処置できるため、一般的な保険適用の根管治療と比べて治療回数が少なく、再治療のリスクを軽減できるメリットがあることを説明したところ、治療に同意いただきました。
まず、マイクロスコープを用いて過去に詰めた薬剤や細菌感染した部分を丁寧に取り除きます。次に歯根内部の洗浄と消毒を行い、薬剤を隙間ができないようにしっかりと詰めて密閉しました。
被せ物を製作する前に、左上奥歯の表面に「ワイヤー矯正」の装置を取り付けて歯の傾きを整える部分矯正を実施します。
その後、精密根管治療を施した歯には白くて丈夫な「ジルコニアクラウン」を、一番奥の歯には適度な硬さで噛み合わせになじみやすい「ゴールドクラウン」を装着し、治療を終了しました。
治療から5年が経過した現在、経過観察のためにレントゲン撮影をして確認したところ、左上奥歯に再感染は見られず、状態は安定しています。
約290,000円
(精密根管治療、 ジルコニアクラウン、ゴールドクラウン)
その後も再発なく経過は良好です。
・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・装着に際し、天然歯を削る場合があります
・硬い素材の場合、他の天然歯を傷つけることがあります
・治療中、装置によってまれに頬の内側が傷つき、口内炎になる場合があります
2024/10/17
「虫歯がひどくて歯が取れてしまった」とご相談いただきました。
拝見したところ、右上の奥歯には歯の神経にまで達する大きな虫歯が生じていました。さらに、虫歯は歯を支える骨の下の深部まで達しており、歯も欠けている状態です。
このまま放置すると、細菌感染が周りの歯や骨にまで広がり、ほかの健康な歯も虫歯になったり、最悪の場合、歯を失ったりするおそれがあります。
そのため早急に抜歯するか、もしくは保存するための治療が必要と診断しました。
虫歯は歯の根の内部にまで進行しており歯も欠けていることから、虫歯治療後は歯ぐきから出ている歯の部分が3mm未満になると考えられました。この状態では被せ物を装着することが難しく、一般的には抜歯が推奨されるケースです。
しかし、患者様は歯を抜かずに温存することを希望されています。
そのため、歯を残しながら治療する方法として、以下3つの手順で行う計画を提案し、同意いただきました。
①部分矯正で右上奥歯の歯の根を引っ張り出す
歯の根を露出させることで被せ物を装着する土台を確保でき、抜歯を回避することが可能です。
また、抜歯を行わないため傷が生じず、細菌感染のリスクが低減し、その結果、治療後も良好な状態を保てます。
②歯科用顕微鏡「マイクロスコープ」を用いて細菌感染を起こしている根の内部を清掃する自由診療「精密根管治療」を行う
マイクロスコープは、肉眼では見えにくい部分も正確に確認しながら処置できます。そのため、一般的な保険適用の根管治療と比べて治療回数が少なく済み、再治療のリスクを軽減できるメリットがあります。
③「セラミック」の被せ物を装着する
精密根管治療を施した歯に被せ物を装着するための土台を作ります。その後、自然な色合いで、汚れも付着しにくい自由診療の素材「セラミック」の被せ物を装着します。
まず、部分矯正により右上奥歯を被せ物が装着できる高さまで十分に引き上げます。
歯がしっかりと引き上げられた段階で精密根管治療を行い、マイクロスコープで感染部分を観察しながら丁寧に除去し薬を詰めました。
次に安定した被せ物を装着するための土台を整え、型取りを行っています。その後、完成したセラミックの被せ物を装着し、治療を終了しました。
約280,000円
(部分矯正、精密根管治療、土台、型取り、被せ物含む)
その後も定期検診に来ていただいて、術後も良好です。
・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・一部の治療を除き、自費診療(保険適用外)です
・歯の移動に伴って、違和感や痛みを感じる場合があります
・硬い素材の場合、他の天然歯を傷つけることがあります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性がありま
2024/08/20
精密根管治療を受けた患者さんにとって、治療後の歯の健康を維持するためには定期検診が欠かせません。この記事では、精密根管治療後の定期検診の重要性とその具体的な役割、そして歯を長持ちさせるためのケア方法について詳しく解説します。
精密根管治療は、歯の内部にある感染した根管を徹底的に清掃し、消毒してから封鎖する治療法です。この治療は、歯を抜かずに保存するための最終手段として行われます。精密な技術と高度な機器を使用することで、治療の成功率が高まり、歯を長持ちさせることが可能です。
精密根管治療が成功した後も、定期的な検診が必要です。以下に、定期検診が重要である理由を説明します。
根管治療を行った歯は再感染のリスクがあります。定期検診を受けることで、再感染の兆候を早期に発見し、適切な対処を行うことができます。再感染が早期に発見されれば、再度の治療や感染の拡大を防ぐことができます。
治療後の歯が安定しているか、正常に機能しているかを確認することは非常に重要です。定期検診では、歯の噛み合わせや動揺の有無をチェックし、必要に応じて調整を行います。これにより、歯の長期的な健康を維持することができます。
根管治療後の歯だけでなく、口腔内全体の健康も定期検診で確認します。歯周病や他の歯の問題が発生していないかをチェックし、口腔内の総合的な健康を保つためのアドバイスを受けることができます。
根管治療後にはクラウン(被せもの)やインレーなどの補綴物が装着されることが多いです。定期検診では、これらの補綴物が適切に装着されているか、劣化していないかを確認します。補綴物が問題なく機能していることを確認することで、歯を長持ちさせることができます。
精密根管治療後の定期検診では、以下のような検査や処置が行われます。
歯科医が口腔内を目視で検査し、歯肉の状態や歯の動揺の有無を確認します。また、触診により歯や歯肉の異常をチェックします。
レントゲン検査を行うことで、根管治療を行った歯の内部や周囲の骨の状態を確認します。再感染や骨の異常がないかを詳細にチェックします。
治療後の歯の噛み合わせが適切であるかを確認し、必要に応じて調整を行います。噛み合わせの問題は歯に過度な負担をかけるため、重要なチェックポイントです。
専門的な器具を使用して歯垢や歯石を除去し、口腔内を清潔に保ちます。これにより、再感染や他の歯周病のリスクを減らします。
必要に応じて、フッ素塗布やシーラント処置を行い、歯の再石灰化を促進し、虫歯のリスクを減らします。
定期検診だけでなく、日常のケアも歯を長持ちさせるためには欠かせません。以下に、効果的なケア方法を紹介します。
歯を長持ちさせるためには、毎日のブラッシングが基本です。適切なブラッシング方法を身につけ、歯垢をしっかりと除去しましょう。特に根管治療を行った歯の周囲は丁寧にケアすることが重要です。
歯と歯の間に残る歯垢を除去するために、毎日のフロッシングを習慣化しましょう。フロスや歯間ブラシを使用して、歯間の清潔を保ちます。
栄養バランスの取れた食事を心がけ、歯と歯茎の健康を維持しましょう。カルシウムやビタミンCを含む食品を積極的に摂取することが重要です。
適度な運動は全身の健康を保つために重要です。健康な体は口腔内の健康にも良い影響を与えます。
喫煙は歯の健康に悪影響を与えます。特に根管治療後の歯には悪影響を及ぼすため、禁煙を心がけましょう。
精密根管治療後の健康維持には、定期検診が欠かせません。再感染の早期発見と予防、歯の安定性と機能の確認、口腔内全体の健康維持、歯の補綴物のチェックなど、定期検診で行われる様々な検査や処置が歯の寿命を延ばすために重要です。また、日常の口腔ケアも怠らず、適切なケアを行うことで、治療後の歯を長持ちさせることができます。定期検診をしっかり受け、健康な歯を維持しましょう。
※保険診療の場合、マイクロスコープは使用していません。ご了承ください。
当院のマイクロスコープ治療の様子
当院の根管治療の症例
https://www.takeuchidental.com/blog/2023/11/27/1438/
https://www.takeuchidental.com/blog/2023/07/07/1298/
この記事の監修
武内歯科医院 院長 武内 清隆
当院では、お口の中の健康とお口周りの美しさをトータル的に考えた治療を心がけています。歯科医院の目的は、虫歯・歯周病の歯の治療です。しかし最も力を入れるべきことは、虫歯や歯周病にならないための予防指導だと考えます。
プラークコントロールや歯の健康診断を定期的に受けることで大切な歯を守れるのです。丈夫で健康な歯は、何でも美味しく食べることができ、いつまでも若々しい口元と笑顔を保てます。当院の指導で、ご自分の歯で末永く健康にいきいきお過ごしいただきたいと思っています。
【経歴】
1994年
東京歯科大学卒
1994年
武内歯科医院勤務
1994年
林歯科医院勤務
1996年
林歯科医院退職
1996年
葉山町武内歯科医院勤務
2000年
葉山町武内歯科医院退職
2000~2001年
聖路加病院口腔外科研修
2014年
武内歯科医院継承
【取得資格】
日本歯周病学会認定医
日本顎咬合学会咬み合わせ認定医
日本顎咬合学会一般口演優秀発表賞受賞
【所属学会】
日本歯周病学会
日本顎咬合学会
日本顕微鏡歯科学会
日本歯内療法学会
【論文】
2005年
日本顎咬合学会誌 噛み合わせの科学25巻『機能的な歯列構築への追求』
2005年
JCPG会報『エムドゲイン ゲルを用いた歯周治療』
2013年
日本歯科評論誌3月号『IPS e.max臨床応用のポイント』
【学会誌】
2005年
日本顎咬合学会誌 噛み合わせの科学25巻『機能的な歯列構築への追求』