2024/01/15
「以前別の医院で治療した歯の歯茎が腫れて、膿が出て噛むと痛い」とご相談いただきました。
拝見したところ、左下奥歯(第2大臼歯/7番)の歯茎は膿が溜まり大きく腫れる「フィステル(サイナストラクト)」を認めました。
詳しく確認するためにレントゲン撮影を行ったところ、第2大臼歯の歯根にはフィステルの原因となる黒い影を確認しました。
検査結果から、以前の治療で歯の神経を残して被せ物を装着していたものの、何らかの原因で神経が細菌感染して死滅したことが考えられます。
1本手前の奥歯(第1大臼歯/6番)は、以前の根の治療の薬剤が先端まで十分に届いていないうえに、被せ物の下には虫歯が見られました。既に歯根内に細菌感染が進行していて、第2大臼歯と同様にフィステルを形成したり、痛みが発生する恐れがあります。
そのため左下奥歯2本に対して、歯根内部の感染や膿を取り除くために「根管治療」を行う必要があると診断しました。
長く安定した歯の状態を保つために、歯科用の顕微鏡である「マイクロスコープ」を活用した精密根管治療を行う提案をしました。
マイクロスコープでは、非常に細かい部位を拡大して観察することができるため、感染部位の除去や根管治療後の薬剤の充填などの処置を正確に実施でき、再発のリスクを軽減することができます。
また、神経が死んだ歯は神経が生きている歯に比べて脆く、歯が割れるリスクも高まるため、被せ物はプラチナ(白金)を主体にした金属製の被せ物「PGAクラウン」を提案しました。
PGAクラウンは、歯を削る量を少なくでき、歯自体の強度を確保できるうえに歯の硬さに合わせて金属が調合されているため、噛み合わせにも馴染みやすい被せ物です。
患者様から「再発しないようにしっかり治療したい」とのご希望をお伺いし、治療に同意をいただきました。
まずは、左下奥歯2本の古い被せ物や虫歯を除去し、マイクロスコープ使用下で根管治療を行います。
根管治療中は、ゴムのシートで患部を保護する「ラバーダム防湿」を行い、根管内に唾液や細菌が入らないよう注意をしながら治療を進めました。
感染歯質や膿がなくなり、症状が安定したことを確認し、再感染防止のためにゴム製の薬剤で根管の先端までしっかり密閉しました。
根管治療終了後は、歯根破折のリスク軽減を考慮して、歯と同じようにしなるグラスファイバー製の土台「ファイバーポスト」を装着します。
その後被せ物の適合をより良くするために、土台を最小限かつ丁寧に削って形を整え、型採りを行い、PGAクラウンを作製しました。装着時は、歯に過度な負荷がかからないよう、慎重に噛み合わせの調整を行いました。
根管治療の再発についてのブログもご覧ください↓↓↓
372,000円(税別)
(根管治療、被せ物、ファイバーポスト、型採り)
腫れは治まり、噛み合わせも問題なく順調に経過しています。
レントゲン撮影では、根管はしっかり密閉されていて、歯根の先の黒い影の消失を確認しました。
患者様は「痛みもなくしっかり噛めるようになって嬉しい」と大変お喜びでした。
現在も、定期的に経過を確認しています。
・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・一部の治療を除き、自費診療(保険適用外)です
2024/01/11
「右上の奥歯が痛い」とご来院いただきました。
右上奥歯(第1大臼歯/6番)に金の詰め物があり、そこで痛みが生じていたため、金歯を外して中を確認した結果、歯にひびが生じていました。
詳しい検査を行うためCTを撮影したところ、ひびが原因で根の周りに細菌感染と炎症が広がり、膿の袋が形成されていることがわかりました。
この歯のすぐ上には、鼻の空洞である「上顎洞」が存在します。今回の炎症はこの上顎洞まで及んでおり、鼻水や鼻詰まりを引き起こす「上顎洞炎」も併発していました。
痛みや炎症を改善するためには、原因となる歯の内部を清掃する「根管治療」が必要と診断しました。
CTと歯科用のマイクロスコープを活用し、根の中の状態を確認しながら痛みや炎症をしっかり取り除くことができる精密な根管治療をご提案しました。
これにより、肉眼では観察が難しい部位に対しても正確な処置が可能になり、感染の再発リスクも低くなります。
治療に同意いただき、まずは精密な根管治療を開始して、歯の内部の感染組織を丁寧に取り除きました。
痛みが解消されたことを確認してから、歯に適した土台を設置し、適合の良いセラミックの被せ物を装着して治療を完了しました。
約200,000円
【内訳】
精密根管治療(3根管)
土台(ポスト)
セラミックの被せ物
歯の周りの炎症や膿の袋が消失し、上顎洞炎も完治しました。
患者様にも「痛みがなくなり、日常生活も快適になった」と大変お喜びいただきました。
現在も定期検診でご来院いただいており、感染の再発もなく、良好な口腔内を維持しておられます。
・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
2024/01/06
「奥歯に根の病気が見つかり、抜歯してインプラント治療が必要と診断された。歯を残せるか見てほしい」とセカンドオピニオンでご来院いただきました。
拝見したところ、左下奥歯(第2小臼歯/5番)の根の周りに感染が認められました。
レントゲン上では膿の袋である「根尖病巣」が確認でき、歯を支える骨が大きく溶けている状態でした。
根尖病巣の原因は歯の内部まで大きく進行した虫歯であり、歯を残すためには根の中をきれいにする「根管治療」が必要です。
患者様は「再発しないようしっかり治したい」とご希望でした。
虫歯を取り除いてから、歯科用のマイクロスコープを使用した精密な根管治療で根尖病巣を改善する治療をご提案しました。
マイクロスコープを使用することで、肉眼では観察が難しい部位にもより確実な処置が可能になり、抜歯を回避できる可能性が高まるだけでなく、感染の再発リスクも低下します。
治療に同意いただき、まず虫歯部分を丁寧に削ってから、精密な根管治療により感染組織をきれいに取り除き、薬を詰めました。
その後、歯を補強するための「ファイバーポスト」を用いて土台を構築し、適合と耐久性に優れたプラチナの部分的な被せ物で修復しました。
約120,000円
【内訳】
精密根管治療(1根管):30,000円
ファイバーポスト:20,000円
プラチナの被せ物:70,000円
根尖病巣が縮小し、歯を温存することができました。
患者様にも「自分の歯を残すことができて嬉しい」と大変ご満足いただきました。
現在は定期的な検診でご来院いただいており、虫歯や根の感染の再発もなく良好な経過をたどっています。
・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・被せ物の装着に際し、天然歯を削る必要があります
2024/01/05
「昔別の医院で治療したところが噛むと痛い」とご相談いただきました。
拝見したところ、被せ物が入っている右下の奥歯(第1大臼歯/6番)に「根分岐部病変」が認められました。
下の奥歯は複数の根があり、その分かれ目に細菌感染が起きて歯を支える骨が溶けてしまうのが根分岐部病変です。
根分岐部病変は、歯周病によるものと歯の根の感染が原因のものがあります。診断のために「アクセサリーポイント(ガッタパーチャー)」と呼ばれる細い棒を使用し検査したところ、炎症は根の先まで及んでおり、根の感染が原因であることが確認できました。
この歯は以前、根の中をきれいにする「根管治療」を行っていましたが、それが不十分だったことが今回の感染の原因と考えられます。
患者様は「再発しないように治療したい」とご希望でした。
歯科用のマイクロスコープを使用した精密な根管治療で、根の中を再びきれいにし感染と痛みを解消する治療をご提案しました。
マイクロスコープによって肉眼では観察が難しい部位に対しても正確な処置が可能になり、感染の再発リスクも低くなります。
治療に同意いただき、最初に古い被せ物を取り外しました。
歯を補強するための金属製の「ポスト」が根に入っていましたが、長くて太さもあり、無理に外すと歯が割れる可能性があります。ポストはそのまま温存し、根管治療が不十分だった1本の根に対して、精密根管治療で感染組織を丁寧に取り除き、薬を詰めました。
痛みが消失したことを確認してから、しなやかな材質の「ファイバーポスト」を用いて土台を構築し、自然な白さのセラミックの被せ物を装着しました。
約190,000円
【内訳】
精密根管治療(1根管):30,000円
ファイバーポスト:40,000円
セラミックの被せ物:120,000円
右の奥歯で痛みもなく噛めるようになりました。
患者様にも「食事のときも痛くない。丁寧に治療してもらえて良かった」と大変お喜びいただきました。
現在も定期検診でご来院いただいており、根の感染の再発もなく経過しています。
・まれに根管治療後も再治療、外科手術、抜歯などの処置が必要となる場合があります
・治療中まれに器具の破折、被せ物や詰め物など修復物の損傷、歯の破折が起こる場合があります
・治療中や治療後に不快症状が出たり、治療後に痛みや腫れなどが生じたりする可能性があります
・噛み合わせや歯ぎしりが強い場合、セラミックが割れる可能性があります
2023/12/28
はじめに
近年、根管治療におけるマイクロスコープの使用が注目を集めています。歯科医療技術の進歩は目覚ましく、特にマイクロスコープは根管治療の質を飛躍的に向上させる重要なツールとされています。しかし、この技術には利点だけでなく、いくつかのデメリットも存在します。本記事では、根管治療にマイクロスコープがなぜ欠かせないのか、日本におけるマイクロスコープの普及率、そしてそのデメリットについて専門的な視点から解説します。
根管治療とは?
根管治療は、感染した歯の神経(歯髄)を取り除き、歯を保存する治療法です。この治療は、虫歯が進行して歯髄まで達した場合や、歯髄が炎症を起こした場合に行われます。
マイクロスコープの必要性
■精密な視覚化
根管治療では、非常に緻密な作業が必要です。マイクロスコープを使用すると、歯の内部の狭い空間を高倍率で詳細に観察でき、治療の精度が大幅に向上します。
■正確な治療
根管治療の成功は、正確な根管の清掃と充填に依存しています。マイクロスコープを用いることで、微細な根管も見落とすことなく、より確実な治療が可能になります。
また削る量は最小限で悪い部分だけ確実に治療することができます。
治療後の再感染を防ぐためにも、詰め物や被せ物を入れたときに隙間がないことが重要です。マイクロスコープは削る面を最大20倍に拡大できるので、切除面を細密に形成することが可能です。
■治療の成功率の向上
マイクロスコープの使用は、治療の成功率を著しく向上させます。これは、視覚化された情報に基づいて正確な判断ができるためです。
■患者様への情報共有
マイクロスコープにはCCDカメラを搭載しています。治療中、虫歯や根管の状態をモニターに映し出し、患者さんのお口の中を一緒に確認していただけます。
万が一抜歯が必要でも、お口の中の映像や静止画像を見ていただくことで、その理由を納得し安心して治療を受けることができます。
日本におけるマイクロスコープの普及率
日本における歯科医院でのマイクロスコープの普及率については、現在約10%程度とされています。
日本での普及が進まない理由として、マイクロスコープの操作に習熟するまでに時間がかかることが挙げられます。また、マイクロスコープの導入には高いコストが伴うことも、普及が進まない一因と考えられています。
マイクロスコープの使用は、特に根管治療やクラック(亀裂)の確認、虫歯の除去、精密な形成と補綴物など、様々な治療でその有効性が認められています。高倍率での観察により、肉眼では見えない微細な部分まで詳細に観察でき、治療の精度が向上します。また、画像の保存や共有も可能で、患者さんとのコミュニケーションを助け、治療に対する理解と信頼を深めることができます。
しかし、マイクロスコープを使用すると1回の治療時間が長くなる可能性があるため、保険診療が中心の歯科医院では導入が難しい場合もあります。また、治療費が高くなるため、患者さんの利用率が上がらないことも、普及が進まない要因の一つです。
マイクロスコープのデメリット
しかし、マイクロスコープを使用する根管治療には、以下のようなデメリットもあります。
■コスト
マイクロスコープを用いた治療は、標準的な治療に比べて高額になる傾向があります。これは、高価な機器の購入と維持、および専門的なトレーニングが必要であるためです。
■技術的な要求
マイクロスコープを使用するためには、高度な技術と練習が必要です。すべての歯科医師がこの技術を習得しているわけではなく、専門性が高まるほど、利用可能な治療者の数は限られます。
まとめ
マイクロスコープを用いた根管治療は、その精度と成功率の高さにより、現代の歯科医療において重要な役割を果たしています。しかし、高コスト、治療時間の増加、技術的な要求など、いくつかのデメリットも存在することを理解することが重要です。特に歯科医師のトレーニングと技術の習得には時間とリソースが必要です。
マイクロスコープは根管治療において欠かせないツールであり、その精度と成功率の向上に大きく貢献しています。しかし、日本での普及率はまだ低く、高コスト、操作の難しさ、治療時間の増加などの課題もあります。これらの課題を克服し、より多くの歯科医院でマイクロスコープが使用されることを期待し、今後の歯科医療の進展に注目していきたいと思います。
※保険診療の場合、マイクロスコープは使用していません。ご了承ください。
当院のマイクロスコープ治療の様子
当院の根管治療の症例
https://www.takeuchidental.com/blog/2023/11/27/1438/
https://www.takeuchidental.com/blog/2023/07/07/1298/
この記事の監修
武内歯科医院 院長 武内 清隆
当院では、お口の中の健康とお口周りの美しさをトータル的に考えた治療を心がけています。歯科医院の目的は、虫歯・歯周病の歯の治療です。しかし最も力を入れるべきことは、虫歯や歯周病にならないための予防指導だと考えます。
プラークコントロールや歯の健康診断を定期的に受けることで大切な歯を守れるのです。丈夫で健康な歯は、何でも美味しく食べることができ、いつまでも若々しい口元と笑顔を保てます。当院の指導で、ご自分の歯で末永く健康にいきいきお過ごしいただきたいと思っています。
【経歴】
1994年
東京歯科大学卒
1994年
武内歯科医院勤務
1994年
林歯科医院勤務
1996年
林歯科医院退職
1996年
葉山町武内歯科医院勤務
2000年
葉山町武内歯科医院退職
2000~2001年
聖路加病院口腔外科研修
2014年
武内歯科医院継承
【取得資格】
日本歯周病学会認定医
日本顎咬合学会咬み合わせ認定医
日本顎咬合学会一般口演優秀発表賞受賞
【所属学会】
日本歯周病学会
日本顎咬合学会
日本顕微鏡歯科学会
日本歯内療法学会
【論文】
2005年
日本顎咬合学会誌 噛み合わせの科学25巻『機能的な歯列構築への追求』
2005年
JCPG会報『エムドゲイン ゲルを用いた歯周治療』
2013年
日本歯科評論誌3月号『IPS e.max臨床応用のポイント』
【学会誌】
2005年
日本顎咬合学会誌 噛み合わせの科学25巻『機能的な歯列構築への追求』